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2007年8月 7日 (火)

太宰「富獄百景」の月見草

太宰治も月見草をこよなく愛し、太宰の名作「富獄百景」の中で「富士には、月見草がよく似合う」と書いてある。と聞いて、古い本棚の奥の太宰治全集から「富獄百景」を引っ張り出して読んでみた。

太宰治が妻と離婚して作家としての意欲に燃えて昭和13年ころ、山梨県河口湖町の「天下茶屋・峠の茶屋」に滞在した。そこで執筆した太宰の名作と言われる「富獄百景」の中で確かに「富士には、月見草がよく似合う」と書いているが、ここで言う月見草は「黄色のオオマツヨイクサ」のことで厳密に言うと「月見草」ではなさそうである。 

まあ黄色いオオマツヨイクサを月見草と呼ぶこともあるそうだから、まったく間違いではないから目くじらを立てることはないが、チョット一言言いたい気分である。

実はこの花に出会うまでは、篠も黄色い花のオオマツヨイクサを月見草と思っていた。だから「白い花の月見草」と呼んでいたくらゐだから、ここで太宰さんを責める気持ちはまったくない。月見草に代わって一言言うだけ。

「後の説明がなく、純白で穢れを知らない月見草は富士山とよく似合う」なら納得するが、太宰が言う「富士山の山と、立派に相対峙し、みじんもゆるがず、なんと言うのか、金剛力草とでも言いたいくらゐ、けなげにすくっと立ってゐた」というイメージは家の月見草には似合わない気がする。

月見草は黙ってソット見るだけ、手も触れることさえできない、気品、可憐、愛おしさ、溢れる花である。まさに「無言の恋」(と篠は思っている)

千の風になったとき太宰さん聞いてみよう。専門家言語楼さんのご意見もお聞きしたい。今晩月見草にも聞いてみる。

「富獄百景」の中でバスに乗った太宰が老婆に教えられて月見草を見たくだりを参考までに原文のまま。

  

「老婆も、私に安心したところがあったのだろう、ぼんやりひとこと、

「おや、月見草。」

そう言って、細い指でもって路傍の一箇所をゆびさした。さっと、バスは過ぎてゆき、私の目には、いま、ちらとひとめ見た黄金色の月見草の花ひとつ、花弁もあざやかに消えずに残った。3778米の富士山の山と、立派に相対峙し、みじんもゆるがず、なんと言うのか、金剛力草とでも言いたいくらゐ、けなげにすくっと立ってゐたあの月見草は、よかった。 

富士山には、月見草がよく似合ふ。」 

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コメント

2色刷りなんて、すごい!今、ポーチュラカが、満開。挿し木して、増やしてる。朝しか,咲かないけど、色とりどりのかわいい恋って感じ?だよ。

投稿: 藍弥生 | 2007年8月 7日 (火) 20時17分

写真ついたよ!スカートのフリルみたいね。

投稿: 藍弥生 | 2007年8月 7日 (火) 21時32分

篠笛の君へ
 太宰治が月見草を誤解していた、という篠・探偵の推理はおそらくその通りでしょう。太宰文学の研究者の間では以前から指摘されていたことのようです。
 太宰の作品は、私自身、青年時代よく読んだものですが、「富士には、月見草がよく似合ふ」という名句については、実はよく覚えていません。ただ、太宰の郷土の後輩にあたる長部日出雄氏が数年前『桜桃とキリスト――もう一つの太宰治伝』の中だったか、あるいはその著作で大佛次郎賞を受賞した際の記念講演だったかで、太宰が『富嶽百景』を書いた当時の足跡を丹念にたどって調べたが、作品の中で描写されている時間帯には「月見草」が見えるはずはない、という趣旨のことを述べていた記憶があります。
 太宰のことだから、すべてを承知の上であえて“文学的修辞”を使ったのかもしれません。なにせ、自伝的要素が強い紀行文の『津軽』でも、一番感動的な、育ての親との再会の場面はほとんど虚構とされているほどだからです。うぶな私は、『津軽』に書かれていることは基本的には事実通り、とばかり思いこんでいました。逆説的にいえば、読者をそう思わせることこそが小説家としての腕前ということになるのかもしれません。
 「富士には、月見草がよく似合ふ」。太宰は偉大なコピーライターとも言えますね。

投稿: 言語楼 | 2007年8月 7日 (火) 22時28分

篠笛さんの太宰治の一節、興味深く読ませて頂きました。また、言語楼さんのコメントも、なっちゃんの知らない世界のことが書かれていておもしろく、また勉強になりました。はずかしいけれど、なっちゃんは、太宰文学は「走れ メロス」しか読んでいません。
本日のブログを読んで、改めて篠笛さんの送ってくださったはがきの月見草を眺めてみると、ますます高貴な花に思えてきました。

投稿: なっちゃん | 2007年8月 8日 (水) 00時28分

言語楼さん
専門的で細やかなコメント有難うございました。勉強になりました。

投稿: 篠笛 | 2007年8月 8日 (水) 08時03分

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