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2012年1月17日 (火)

最期は片道切符の一人旅

最期は片道切符の一人旅

仲間の残した重い教え

書棚を整理していると敏腕デカの最期を記したメモが出てきた

 

「落とし(調べ)の神様]と威名を持った敏腕デカSは手掛けたホシの出所後の就職や家族の面倒までみていた。

デカ仲間だけでなく塀の中でも畏敬の目でみられていた。

癌の手術を三回も受けた。退院すると医者や家族の手を振り切って出勤、手がけたホシの面倒を見たり、ホシを追い続けた。

 退職後は孫娘の成長を楽しみに悠々自適の生活を送っていた。    

 彼が、老人ホームに入所したと聞いて尋ねた。都心に向かう私鉄駅近くの、しゃれた五階建の普通のマンション風のホームだった。          

「手がしびれ飯が思うように食べられなくなった。脳梗塞かと思ったが、アルツハイマーの診断。女房が看病疲れで腰椎疲労・圧迫骨折。散々苦労を掛けた女房に、もうこれ以上世話にはなれねえ。

娘もいるが娘には娘の家庭がある。娘の家にも近いここを選んだ」

 転売、譲渡不可、トイレ付六畳一間二千五百万円の部屋を続きで二部屋買い、間の壁を外し寢室と居間に改造、夫婦で入った。

 最期の旅は夫婦一緒にと、五千万円を投じた再出発の夢は長くは続かなかった。

翌年暮れ奥さんが病状悪化、転院先の病院で亡くなった。

病状進行中の彼はそれを知らされることもなく一か月後、後を追った。

「生活費月一人二十五万円だが、医者もいるから安心だ。入所者はそれぞれ人生観は違うが、身辺整理を済ませ人生の再出発、あの世へ片道切符と言う点で一致している。心配事も、悩みも一緒だから誰でも気楽に話せる。 

JBK(丈夫で、惚けずに、コロリンコ)は、至難の技で夢だが、一歩近付いたよ」

 一言、一言噛み締めるように語った彼の言葉はそのまま耳に残って離れない。  

 人に迷惑掛けず向こう岸に辿り着くまで、金も掛かる。愛し合った夫婦も最期の旅は一緒には出来ない。

 仕事の上でも色々教えてもらった。

彼が残した人生締めくくりの教訓は余りにも重い。厳しく切ないがこれが現実。

その後、遺族との連絡は途絶えたままだ。

古びたメモは、最近色々思い悩んでいるのを見かねて「たまには思い出してくれよ」と彼が呼びかけてきたのだろう。

眼は鋭かったが笑顔が優しく、デカになるために生まれたような真っ直ぐないい男だった。

千の風になってを吹奏冥福を祈るのみ。

愛し合った夫婦も

最期の旅は

道連れが許されない

願いは一つ

向こうでの再会

彼は奥さんと再会できただろうか

どんな生き方をしても

金を掛けても

人に迷惑を掛けない

店仕舞いは

夢のまた夢

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コメント

今は昔、塀の中からお礼状が届く時代がありました。 夢のような古き良き時代でした。
Sさんのご冥福を心からお祈り致しますm(_ _)m

投稿: ライス | 2012年1月17日 (火) 17時29分

素晴らしいデカさんがいたんだね。
店仕舞い、身につまされます(・・;)

投稿: 撫子 | 2012年1月17日 (火) 17時58分

仲の良いご夫婦は、本当に連れ立つように・・・
というけれど、
一ヶ月後というのも仲の良さを証明しているね
篠笛さんを通して、敏腕デカさんに会えました♪感謝します

投稿: 夏海 | 2012年1月17日 (火) 19時36分

身辺整理「心辺整理」着々進んでるようで羨ましいです。余り急がないで下さいよ。行く先・一番星は決まってるんですからね。Sさんのご冥福を心からお祈りします。

「心辺整理」全然進まず「家内にひかれてお大師参り」。迷いがあるのが生きてる証拠と勝手に決め付け、有難く護摩札を頂いてきました。
大安だったせいか、結構混んでました。

投稿: 竹 | 2012年1月17日 (火) 20時56分

5千万円ですか!
片道切符も高いですね~
孫と遊ぶと「もう少し生きたい」と欲が出て
なかなか、モノが捨てられません。
今日は寒かったですね・・秋田もドカ雪のようで介護に行くのも考え中です。

投稿: 梅 | 2012年1月17日 (火) 21時17分

「あいつもいい奴だったナ」と言われるように店じまいをしたいと思っています。

投稿: 山猿 | 2012年1月17日 (火) 21時18分

落としの神様、恋に落とすのかと思った!
面倒見のよいデカさんに出会えた☆は、しあわせだね。普通の人より、深くて濃い人生になるね。

投稿: 藍弥生 | 2012年1月18日 (水) 00時00分

あずみ野便り その17(1月17日)

父は家族に見守られ、祖父はJBK、祖母は3ヶ月床に伏せりましたが、叔父さん叔母さん、そして母の手厚い看護を受けながら逝きました。
父、祖父母、身内の死はとても悲しかったけれど、「幸せに逝く」姿しか見てきませんでしたので、今日の叔父さんのブログ記事はハードでした。応えました。

順番から行くと次は広津の90の母でしょう。祖母へのあの献身的な手当てや世話を、側にいてづっと見てきました。もしも、母にそのような時が来たのなら、母が祖母にしてきた以上の事をしてあげようと思っています。元気な家族の努めですし、育ててもらった恩返しがまだ何も出来ていませんし。

投稿: 広津のハルキ | 2012年1月18日 (水) 02時06分

ライスさん
本当にいい人だった。
彼との出会いが俺の人生を変えた。
色々の意味で忘れてはならない人。

撫子さん
人の心に踏み込んで、溶け込んで、心を読んで読ませなくては真実を聞くことができない。
デカとはそういうものよ。
しゃべれば死刑になる場合もある話だからね。
この話身につまされるよね。彼に会ってじっくり話をしたい。

夏海ちゃん
仲良く連れ立っては難しそうだね。
男が惚れるいい男でしたよ。

竹さん
大師様のご利益がありますよ。
あなたも活動家ですね。いつも奥さんとご一緒で羨ましいですね。

梅ちゃん
店仕舞いにも金が掛かるよね。これからじゃ間に合わない。JBKを願うのみ。

山猿さん
山猿さんを悪く言う人はいないよ。安心していいよ。
今日は歌会よろしくね。

藍チャン
古きよき時代の貴重な人情デカだったよ。
会ってゆっくり昔話をしたいもの。

広津のハルキ君
重い話でごめんね。でも現実の話として考えていかなければならないことだよね。
広津のジジ・ババの幕引きは羨ましいものだよね。
それは強い家族の絆がしっかりしていたからだと思う。
ハルキ君の母親に対する気持ち大切にしてください。
今そういう気持ちの人が少なくなっているような気がする。
里山の日誌の「山」を見て感無量。
(ふるさとの山に向かいて言うことなし ふるさとの山はありがたきかな 思い出の山 思い出の川)
石川啄木の歌かな?横浜に出てきてからよく口ずさんだものだよ。
山はジーとみていて、何でも知っている。


投稿: お篠 | 2012年1月18日 (水) 08時49分

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